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なぜ即時原発ゼロにしなければならないのか


 私がなぜ即時原発ゼロ(※)を主張するのか、その理由を簡単にまとめておきます。
※ただし、大飯原発のように電力不足回避のために稼働させることは例外として許容する。
(以下はoldmanさんとのコメントのやりとり(記事はこちら)を再構成したものです。)

Q.即時原発ゼロを主張しているが、その根拠は何か?

A.私の根拠は要約すると以下の4つです 。
① 完璧な安全性の確保は無理(どこかでわりきらなくてはならない、テロの恐怖や人為的ミスはゼロにできない)なのに事故の影響が予想できないほど甚大
② 原発は核のゴミのつけを将来世代に押しつけて現在世代がいい思いをするための道具であり倫理的に許されない
③ 福島の大事故が起こった日本では、「原発稼働」が国民にもたらす心理的な負荷は小さくない
④ どうしても原発に依存していかなければ国が立ちゆかないような状況ではない


Q.原発の安全性について、しっかりと対策を施していけば、福島のような事故はもう二度と起きないのではないか。

A.完璧な安全はありえません。テロの恐怖や人為的ミスはゼロにできません。
 加えて、政府や電力会社の主張する安全への国民の信頼がないまま再稼働されるのはごめんです。


Q.「完璧な安全性」が達成されないから原発に反対というのは、非現実的な感情論ではないか。

A.原発は事故の影響が大きすぎるため、リスクコントロールが困難です。
 確かに飛行機、車などは危険性がありながら、利便性との兼ね合いで利用されています。
 原発がそれらと違うのは過酷事故が起こった場合の影響が大きすぎることです。
 たとえば福井の原発で事故が起こって琵琶湖の水が飲めなくなるなんてことになると目も当てられません。
 妥協策として一部の経済学者が主張するように「原発に限度額のない賠償保険をかけて稼働させる」のはひとつの手かと思います。
 その場合、保険の引き受け手のない危険な原発は動かせなくなります。
 ただ、そうした保険の前例はなく、保険が成立しない可能性が高いのではないでしょうか。
 原発がそれだけ危険だということです。


Q.核廃棄物については今後長い年月をかけて対策を検討することになっている。マスコミが騒ぐほどの大問題ではないのではないか。

A.日本の国土や日本人の特性を考えると核のゴミをうみだす原発は日本に向いていません。
 日本は国土が狭く、自然災害も多いため原発の運転や核のゴミの管理に向いていません。
 また、日本人は福島の瓦礫の受け入れで大もめしていることからわかるように、繊細でリスク回避性行の強い民族です。核のゴミをうみだす原発は日本人にはそぐいません。
 さらに、現在見積もっている核のゴミの処理処分費用は今後大きく上方修正される可能性が大きくあります。
 原発は核のゴミのつけを将来世代に押しつけて現在世代がいい思いをするための道具であり倫理的に許されないと考えます。
 平成40年頃に最終処分場を建設する方針があるのは事実ですが、先送りは許されません。
 これまで生み出した核のゴミが消えるわけではありませんが、これ以上無闇に増やすべきではないでしょう。
 さらに、全量再処理という現在の核燃料サイクル方針には大きな問題があるので、今は見直しをする良いチャンスです。
 なし崩し的に再稼働をしてしまうと、見直しのチャンスを逃してしまいます。
 

Q.政治的に不安定な中東に化石燃料を大きく依存する極めて危険な現状。エネルギーの安全保障上、原発は必要不可欠では?

A.中東に大きく依存しているのは石油のみで電力への影響はわずかです。
参考資料(民間討論会事前学習資料).PDF
 これは原発が必要な理由としてよく語られる典型的なウソです。
 まず、情勢不安な中東に大幅に頼っている化石燃料は石油だけです。(参考資料35P~37P参照)
 そして、石油火力発電のシェアは10%もありません。(参考資料43P参照)
 ですから、石油が高くなっても電力は石炭火力やLNG火力の増強で十分まかなえます。
 石油がとまるとガソリンや燃料など電力以外の面で大変になりますが、それは原発で代替できるものではありません。


Q.石炭やLNGの価格が高騰する可能性もゼロではない。やはり原発はエネルギーの安全保障上、必要不可欠では?

A.エネルギー安全保障は重要ですが、危機になったときに原発を稼働させればいいわけで、それまでは原発を稼働させる十分な理由がありません。
 石炭やLNGの価格が高騰した場合は、原発稼働も考えなくてはならないでしょう。
 そのため、即時原発ゼロとしても、耐用年数を過ぎていない原発をすぐに廃炉することには反対です。
 私の主張する即時原発ゼロはゼロ稼働であって即時全原発廃炉とは違います。


Q.危機になったら原発を稼働させていいという考えは、安全や核のゴミや国民の心理的負荷は無視しており、論理的矛盾ではないか?

A.比較衡量の問題であり、論理的矛盾ではありません。
 資源価格の激しい高騰という危機が訪れた場合は、原発の欠点と比較衡量しながら原発稼働を考える必要があります。
 現状では原発の欠点の方が大きいため、原発稼働の必要性はありません。


Q.即時原発ゼロでは電気代が大幅に上がるのではないか。
 発電コストを考える場合、原発の建設はすでに完了しているのに対して、再生可能エネルギーまたは新規火力発電所はこれから新たに建設しなければならない。

A.電気代の上昇は15%程度になる可能性がありますが、原発を縁を切るためには許容可能な範囲だと思います。
 即時原発ゼロだと短期的に15%程度電気代があがる可能性があります。(本来ならどの程度あがるか政府が精査すべき。)
 中には1%でも電気代が上がるのは嫌だと思われる方もいるでしょうが、民主主義の国なので、許容範囲は最後は政治が決めるべき問題です。
 電気代が上がる理由は以下の通りです。
・原発を火力発電で代替するため、その分化石燃料費用がかかる。
・原発は稼働させなくても一定期間は償却費用などがコストとしてかかる。
・原発労働者の失業補償などの対策が必要。
 なお、電気代の高騰は短期的なもので、徐々に下がっていくはずです。
 また、原発を稼働させなければ以下の負担がなくなるため、トータルでみた負担はむしろ軽減される可能性があります。
・新たに出る核のゴミの処理処分費用(現時点では明らかになっていないが、社会的コストなどを含めると相当莫大な負担になる可能性がある)
・原発稼働による国民の心理的負担、防災準備に係る負担


Q.国家の命運を決するような重大な変化は時間をかけて実行すべき。即時原発ゼロという性急な主張は、結局は国民に跳ね返り、国民の生活を破壊することになる。

A.即時原発ゼロで国民の生活が破壊されるというのはウソ(デマゴギー)です。
 即時原発ゼロぐらいで国民の生活が破壊されることはありません。
 実際、今年もほとんど止まっていますが、生活が破壊されているでしょうか?
 影響の大きい短期に限ってみても、日本全国の年間の電気代が16兆円から19兆円になる程度の影響がでるだけです。(消費税1%引き上げと同程度の影響)
 消費税5%引き上げや円高の方がよほど影響が大きいし、国民の生活を破壊していると思います。


Q.20~30年後に原発ゼロを達成すれば十分ではないか。
 原発ゼロまで猶予期間を置き、その間に再生エネルギーや省エネの技術開発や資源問題の解決するのを待てばよい。

A.20~30年後まで原発事故リスクを残し、核のゴミを出し続けたくはありません。
 今すぐ原発をとめられるのだから、今すぐとめればよいという考え方です。(電力不足対応に必要な大飯などの原発は除く)
 原発を使うのも知恵なら使わないでやっていくのも知恵です。
 原発に頼らないとやっていけないというのは後進国的な貧しい発想ではないでしょうか。
 また、20年後のことは誰にもわかりません。
 ですから、技術的課題や資源問題がなくなっているかもしれませんし、なくなっていないかもしれません。
 長期的な計画をつくるときは楽観的に考えず、最悪のことを考えてつくるのが基本かと思います。



以上。


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テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済

どうやら民主党政権のファイナルアンサーは「原発依存」で間違いなさそう


 4日に閣僚が集まって、将来原発ゼロにした場合の課題が議論された模様。

 革新的エネルギー・環境会議ホームページ(9/6現在議事要旨なし)


電気代倍増、より厳しいCO2削減…エネルギー環境会議で「原発ゼロ」の課題を議論 産経新聞 9月4日(火)
 政府は4日、エネルギー・環境会議を開き、将来的に原発ゼロを目指す場合の課題を議論した。2030年にゼロにする場合、原発を代替する再生可能エネルギーの普及に約50兆円の投資が必要と試算。電気代を含む家庭の光熱費は22年比でほぼ倍増し、月額3万円を超すとした。
 政府は10日にも「将来的な原発ゼロ」を柱とする新たなエネルギー・環境戦略を決定する見通しだが、国民負担の増大や経済への悪影響は必至で、反発が強まる可能性もある。



 即時原発ゼロを願ってパブコメを書いた幾万もの国民が知っておくべき悲しい事実を書きましょう。

 原発は全て再稼働することが大前提となっている民主党政権には「電気も足りたし、原発再稼働する必要ないんじゃない?」という素朴な疑問に答える気は全くありません。

 彼らは脱原発を本気で考える者なら当然考えるであろう「今この瞬間からできるだけ原発に頼らない、再稼働しないとするとどういった課題があるか」ということを考える気はさらさらありません。

 「即時原発ゼロなんて狂気の沙汰でありえないんだけど、2030年ぐらいの遠い将来なら原発ゼロでもうまくいけちゃうかもしれないから考えみてもいいかな」ぐらいの感覚でしかないのです。

 今回の会議からは「福島の事故で今は国民が非常に感情的になっている。責任ある政治家はその一時の感情に流されて間違った選択(原発ゼロ)をしてはならない。ただ、結論ありきだと思われると反感を買うので、原発ゼロだとこんなに大変なことになるということを説明して理解してもらうしかない。」という原発丸ごと維持という結論ありきの閣僚の本心が透けてみえます。
 
 会議の中で説明に使われた資料が公開されていますが、これでもかと「原発ゼロにすると大変だぞ~」ということが書かれています。

エネルギー・環境戦略策定に当たっての検討事項について(PDF)

 実に誘導的、ミスリーディングな資料なんですが、内容の問題点につっこむのは長くなるので次回以降します。

 民主党政権には「原発利用推進」という結論があるんだけど、反原発の国民が相当いて無視もできないから、「原発ゼロにすると電気代2倍ですよ!」「再生エネ投資が50兆円もかかります!」みたいなわかりやすく「(一応一生懸命考えてみたんだけど)僕ら民主党が原発ゼロを選択できなかった理由集」をせっせと官僚につくらせていたわけです。

 政府がこうした資料を発表すると、大半の原発推進マスコミは内容を検証もせずたれ流してくれるので、「原発ゼロって大変そうだなあ。原発ゼロってリアリティないよね。特に即時原発ゼロ派とか頭おかしくね?」みたいな世論が形成されていくわけです。

 上で引用した記事は産経新聞のものですが、元社員が「ちょうちん記事を書いて財界からお金を集めている」と言う(下記リンク参照、なかなか面白いです)だけあって、みえみえの「原発利用やむなし世論形成記事」となっています。

産経新聞社員「発行部数水増し、原発賛成はカネになるから!?」 livedoorニュース12/8/28

 記事では「政府は10日にも「将来的な原発ゼロ」を柱とする新たなエネルギー・環境戦略を決定する見通しだが、」などと書かれていますが、政府は「本気で原発ゼロにしよう」なんざこれっぽっちも考えてません。

 ミスリーディングな会議の資料をみれば政府の本気度はわかりそうなものですが、読解力がないのか産経新聞はいまだに政府が「将来的な原発ゼロ」戦略を決定する見通しだと思っているようです。

 万が一、「「将来的な原発ゼロ」を柱とする新たなエネルギー・環境戦略」になったとしても、「ただし再生エネの飛躍的な技術革新が必要」「ただし厳しい省エネ規制が国民に受け入れられることが必要」というような様々な留保がついた戦略になるでしょう。それはもはや意思を持った戦略と呼ぶに値しないものです。


テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
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電気代倍増、より厳しいCO2削減…エネルギー環境会議で「原発ゼロ」の課題を議論 産経新聞

電気代倍増、より厳しいCO2削減…エネルギー環境会議で「原発ゼロ」の課題を議論 産経新聞 9月4日(火)

 政府は4日、エネルギー・環境会議を開き、将来的に原発ゼロを目指す場合の課題を議論した。2030年にゼロにする場合、原発を代替する再生可能エネルギーの普及に約50兆円の投資が必要と試算。電気代を含む家庭の光熱費は22年比でほぼ倍増し、月額3万円を超すとした。

 政府は10日にも「将来的な原発ゼロ」を柱とする新たなエネルギー・環境戦略を決定する見通しだが、国民負担の増大や経済への悪影響は必至で、反発が強まる可能性もある。

 会議の冒頭、藤村修官房長官が「国民の声を受け止め、政府として責任を持って決定する」と強調。枝野幸男産業相が原発ゼロに向けた課題を説明し、核燃料サイクル政策の見直しにより、青森県が再処理を前提に受け入れてきた使用済み核燃料の貯蔵場所が維持できなくなる可能性を指摘した。原子力の技術・人材の喪失なども論点とした。

 会議で示された政府試算では、2030年に原発をゼロにする場合、再生可能エネルギー発電が2010年比で3倍超の3500億キロワット時必要になる。実現には1200万戸に太陽光パネルを設置するほか、風力向けに東京都の2倍の用地確保が必要という。

 また、原発を使わずに温室効果ガスを削減するため「強制的な省エネ規制」(国家戦略室)も求められ、省エネ性能に劣る家電製品の販売禁止や中心市街地へのガソリン車乗り入れ禁止などが想定されるという。

 これらの論点について、民主党は週内をめどに党内の意見を集約。政府は10日にも「原発ゼロ」を盛り込んだ新たなエネルギー・環境戦略を打ち出す見通しだ。

テーマ : 脱原発
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政治判断なくサクサク再稼働するための原子力規制委員会制度



 原子力規制委員会って知ってますか?

 「委員5人のうち原子力ムラが3人もいちゃダメでしょ」と人事で揉めているのはご存じの通り。
 でも、人事以上に原子力規制委員会の制度自体に問題があるのはあまり知られていません。

 そもそも何で新たに原子力規制委員会をつくることになったのか。
 経済産業省に原子力の推進と規制の部署が両方あるせいで規制が甘くなったことが福島原発事故の原因だと考えて、新たな規制組織を経済産業省から切り離してつくるべきだと考えたのがそもそもの始まりです。(wikipediaにはもう少し詳しく書いてます。

 その考え方自体はおかしくないのですが、新たにつくった組織(原子力規制委員会)に致命的な欠陥があります。
 原子力規制委員会を政治からの独立性が非常に高い組織(いわゆる三条委員会)としてしまったため、再稼働の判断に政治が関与できなくなってしまったのです。

 そのため、たとえば「脱原発のために稼働させる原発を半分にする」といった政治的な関与が出来なくなってしまいました。
 いくら総理が脱原発を叫んでも、規制委員会に介入することが出来ないため、規制委員会が技術的に安全だと判断すれば再稼働させることができる制度になってしまったのです。

 原発推進政権にとっては、再稼働について自らの判断を下さずに済み、政治的責任のないところで規制委員会が粛々と再稼働の判断をしてくれるなんともありがたい制度です。
 もちろん、反原発派にしてみればまったくふざけた制度です。

 実は、元々政府が提案していた新制度は三条委員会ではなく環境大臣が政治的に再稼働を判断するというものでした。しかし、その提案は国会で通らず、原発推進を目論む自民党の主導で、新組織はいわゆる三条委員会とされることになりました。

 三条委員会にする理由は「菅直人リスク」に対応するためだと説明されました。原発事故の際に総理が現場に介入して混乱させるようなことはまかりならんというわけです。しかし、「菅直人リスク」に対応するのは別に三条委員会にしなくてもできることです。

 真の狙いは原発再稼働を政治に邪魔されないようにすることです。現状のように経済産業大臣が原発再稼働の権限を持っていると、枝野大臣のように再稼働に慎重な政治家が大臣になった場合、再稼働が進みません。

 原発推進派の真の狙いは「菅直人リスク」ではなく「枝野リスク」をなくすことだったのです。

 救いは規制委員会が発足しても全ての原発が再稼働するまでにはある程度時間がかかることです。規制委員会制度の改正が必要ですが、現状ではなかなか難しそうです。

 次の総選挙で民主・自民の原発翼賛会から政権を奪還する政党があらわれることに一縷の望みをかけるしかないのが現実です。


テーマ : 脱原発
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原発のコストが火力発電より高くなったので色々と小細工したでござるの巻


 政府は昨年12月に電源別のコストを検証した報告書を作成した。

コスト等検証委員会報告書(平成23年12月19日)

 政府は2004年に試算したコストに「聖域なき検証」をしたと言っているが、実際は原発のコストが最も安くなるように様々な細工(トリック)が施された「聖域だらけの検証」となっている。

 まずは、日本の主要電源である原子力、石炭火力、LNG火力について報告書が試算したコストをご覧いただこう。

<2030年時点のコスト(カッコ内は2004年試算時のコスト)>
 原子力発電 8.9円以上/kwh(5.7円/kwh)
 石炭火力発電 10.3~10.6円/kwh(5.9円/kwh)
 LNG火力発電 10.9~11.4円/kwh(6.2円/kwh)


 「聖域なき検証」をしたにも関わらず、2004年試算時と同様に原発のコストが最も安くなっているのがわかる。
 「聖域なき検証」でこれまで無視してきたコストの一部を原子力発電のコストに上乗せしたことによって、原発のコストが8.9円以上となってしまったが、それでは火力発電よりコストが高くなってしまうので、政府を牛耳る原子力ムラは様々な涙ぐましい努力により火力発電のコストを引き上げたのだ。

 以下では、原子力ムラが使ったトリックとウソの一部を紹介しよう。

①CO2対策費用のウソ
 2004年試算時にはなかったCO2対策費用(化石燃料を利用した火力発電に関しては環境対策費用)を追加することで火力発電のコストを大幅に引き上げている。
 火力発電はCO2をたくさん出すので、火力発電にCO2の排出量に応じた税金等をかけるべきではないかという議論は確かにある。しかし、まだ検討の段階であり、実際にCO2対策費用を徴収している国はない。CO2対策費用をコスト計算にいれるのがグローバルスタンダードかというと、そういうわけでもない。
 CO2対策費用を除いたコストは以下の通り。

<CO2対策費用を除いたコスト(カッコ内はCO2対策費用)>
 原子力発電 8.9円以上/kwh
 石炭火力発電 7.3~7.6円/kwh(3.0円/kwh)
 LNG火力発電 9.6~10.1円/kwh(1.3円/kwh)

 
 原子力発電のコストが石炭火力発電より高くなってしまうと都合が悪いので、まだ国民的レベルで議論すらされていないCO2対策費用をこれでもかと大胆に盛り込むことにしたのだ。

②運転維持費及び資本費トリック
 発電コストの内訳には「運転維持費」「資本費」がある。2030年のコスト試算にあたっては、2010年時点のコストをベースに推計をしているのだが、ここで原子力を安く見せるトリックが使われている。
 原発の「運転維持費」「資本費」は2030年でも2010年時点と変わらないという試算をする一方、石炭火力発電の「運転維持費」「資本費」は2030年には大幅に増加するという試算をしているのだ。年々発電所の安全基準等が厳しくなり「運転維持費」「資本費」が増加する傾向にあるのは確かであろう。しかし、それは原子力発電も例外ではないはずだ。
 このようなトリックがあると正当な比較ができないため、「運転維持費」「資本費」は2010年時点の数字を使って比較することにする。

<運転維持費及び資本費トリックを是正したコスト(カッコ内は是正前に上乗せされていたコスト)>
 原子力発電 8.9円以上/kwh
 石炭火力発電 6.6~6.9円/kwh(0.7円/kwh)
 LNG火力発電 9.6~10.1円/kwh


 ちなみに、原発のコストには福島の事故を受けた追加的安全対策コストが0.2円/kwh入っているのだが、石炭火力発電の「運転維持費」「資本費」増加分の0.7円/kwhに比べるとわずかなものである。
 このように、ウソやトリックを是正すると原発のコストは石炭火力よりかなり大きいし、LNG火力とはそう変わらないことがわかる。

 コスト検証のトリックとウソはこれだけではない。

③廃炉費用のウソ
 原子力発電所は通常の発電所に比べて使用しなくなった発電所の処分が難しい。発電所自体が放射性廃棄物になるためだ。
 試算では廃炉費用を680億円としている(原発コストの資本費2.5円/kwhに含まれている)が、これまでに廃炉の実績がないため本当に680億円で済むかどうかはわからない。
 ちなみに、事故を起こした福島第一原発では廃炉費用として既に計上した費用だけで1兆2000億円を見積もっている。1号機から4号機まであるので1基当たり3000億円である。福島の廃炉費用は今後も膨らむ可能性がある。
 そのような現実を考えると、正常に廃炉する場合でも、当初の見積もりよりも桁違いの廃炉費用がかかるのではないか。廃炉費用は実際より相当安く計算されている可能性がある。

④使用済み燃料処分費用のウソ
 原発でやっかいな問題のひとつが使用済み燃料をどう処分するかである。試算では使用済み燃料は直接処分ではなく全量再処理をするという計算を行っている。(原発コストの核燃料サイクル費用1.4円/kwhに含まれている)
 直接処分であろうが再処理であろうが、実は日本はこれまでに使用済み燃料を実際に処分した経験がない。そのため、試算のコストはあくまで推計でしかない。六カ所の再処理工場の建設費用が当初の予定費用を大きく上回っていることに象徴されるように、この試算のコストは後から2倍増、3倍増とどんどん大きくなっていく可能性が高い。
 原子力ムラが都合の良い推計で出した下限値と思っておいた方が良いだろう。

⑤事故リスクへの対応費用トリック
 今回の試算から新たに事故リスクへの対応費用(0.5円以上/kwh)が原発コストに追加された。
 福島の事故で明らかになったように、原発は過酷な事故が起こった場合の補償額がとてつもなく大きくなる。そのため、事故に備えて一定の保険料を積み立てる必要がある。その保険料に相当する費用が事故リスクへの対応費用である。
 しかし、この0.5円という数字はもっと大きくなる可能性がある。
まず、検証委員会が認めている通り、福島の事故の賠償費用は確定しておらず、1兆円賠償額が増えれば0.1円/kwh費用が上がるとしている。
 また、賠償額を5兆円と借り置きして事故リスクへの対応費用を0.5円以上/kwhと計算しているが、事故リスクをどうみるか、リスクプレミアムをどうみるかによって変わってくる。実際に、その程度の保険料で引き受けてもらえるかどうかはよくわからない。原子力ムラによる都合の良い試算である可能性は否定できない。

⑥政策経費のウソ
 今回の試算から新たに政策経費(1.1円/kwh)が原発コストに追加された。これは原子力発電に関わる税金投入を原発コストに入れるべきという意見を踏まえたものである。
 これまでの試算ではこうした費用が無視されていたことは驚きであるが、今回もコストに追加したとはいえ、政策経費の一部を追加したに過ぎない。
 政策経費の約半分をしめるのは研究費用であるが、項目名を見ると「将来発電技術開発」となっている。原発研究に不可欠な処理・処分に係る研究費用は発電には直接関係ないという理由で入っていないのだ。原子力ムラによるこの小細工は、検証委員会の委員も気づかなかったようで、コストが少なく計算されることになった。
 政策経費の約半分をしめ研究経費に次いで大きいのは立地費用である。これは、迷惑施設である原発施設を受け入れた自治体に政府が支払っている立地交付金などの費用のことである。
 試算では現在の支払い実績を積み上げて計算しているのだが、将来はさらに大きくなる可能性が大きい。なぜなら、使用済み燃料が増える将来、使用済み燃料の処分施設や中間貯蔵施設を新たに建設する必要が出てくるからだ。そうした核のゴミを引き受ける施設に対する立地費用がいかほどになるのか、まだ実績がないからわからないが、地元に大きな雇用をもたらす発電施設以上に立地費用がかかるのは間違いないだろう。

 
 以上、コスト検証のウソとトリックを紹介してきた。そこからみえてくるのは、火力発電では不確定なコストを算入している一方、原発に関しては不確定でよくわからないコストは参入しないという一貫した姿勢である。
 「聖域なきコスト検証」どころか「聖域だらけのコスト検証」である。

 今一度、コスト等検証委員会がとりまとめたコストをご覧いただこう。

<2030年時点のコスト>
 原子力発電 8.9円以上/kwh
 石炭火力発電 10.3~10.6円/kwh
 LNG火力発電 10.9~11.4円/kwh


 「原発って一番コストが安いんだね!」、、、って誰が思うか。もはや都市伝説並みのうさんくささが満載です。

 「信じるか、信じないかはあなた次第です。」


テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

即時原発ゼロでも電気代は大きく上がらない

 原子力ムラは言うに及ばずだが、経済界は強く原発再稼働を求めている。
 一方、将来の原発利用に関する新聞社の世論調査では、「原発ゼロ」シナリオは3~4割の支持しかなく、過半数は「原発利用」シナリオを支持している。
 これをもって、野田政権は、将来は減らしますと耳障りのいいことを言いながら、今ある50基を超える原発をそのまま利用するつもりのようだ。
 
 私は福島事故を経験した日本が、50基を超える原発を今後も使っていくのがあるべき姿だとはとてもとても思えない。
 将来の原発利用に関する世論調査はあるが、これからの原発利用に関する世論調査は不思議と行われていない。
 もし、国民に正しい情報が伝えられた上で、これからの原発利用に関する世論調査を行えば、大多数は50基を超える原発を今後もそのまま使っていくべきだとは答えないだろう。

 今年の夏でわかったのは原発がなくても電力はなんとか足りるということだ。将来の原発利用に関する世論調査で「原発ゼロ」シナリオの支持が少数にとどまった理由の多くは電気料金アップに対する懸念だろう。
 将来のことはわからないが、即時原発ゼロで電気料金が上がることは確かだ。では、一体どの程度電気料金が上がるのだろうか。政府は電気代が上がると脅かすばかりで正確な数字を示そうとはしない。そのため、多くの国民はどの程度電気料金があがるかわからないので「原発ゼロ」を選択することができないのだ。
 
 そこで、即時原発ゼロの場合の電気料金の増加率をざっくり計算してみた。すると、即時原発ゼロでも電気料金は15%しか上がらないことがわかった。
<以下すべて日本全体の数字>
 電気消費量1.1兆kwh/年
 原発発電量0.3兆kwh/年
 電気料金16兆円/年
 火力燃料費用単価10円/kwh(原発を全て火力発電で代替と仮定。ここの数字はもっと安いかも)
 火力燃料費用3兆円/年
 原発を動かさないで浮く費用+電力会社経営努力0.6兆円/年(この際、経営努力をさせましょう)
 即時原発ゼロによる電気料金増2.4兆円/年(増加率15%)


 政府が脅かす割には、電気料金の増加はそう大きくないことがわかる。各家庭が月々1,000円程度を我慢すれば全ての原発を再稼働させなくてすむわけだ。

 今からでも遅くない。政府は即時原発ゼロで電気代がどれほど上がるかを試算して国民に示すべきだ。その上で、マスコミには今後の原発利用に関する世論調査をしてほしい。おそらく50基すべて再稼働させるべきだという意見はごく少数にしかならないだろう。過半数は半分以上の原発を動かすべきではないという意見になるのではないか。

 電力会社は稼働年数が40年を超える美浜原発すら再稼働をしようと準備を進めている。福島の事故を受けて当事者国ではないイタリアやドイツでさえ脱原発を決めた。まるで福島の事故がなかったかのように、全ての原発が再び動き出すのだとすれば世界の恥である。


<参考サイト>
国民的議論に関する検証会合
エネルギー・環境会議
コスト等検証委員会報告書
電力業界基本情報


テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済

中長期で脱原発と言いながら再稼働やる気満々っておかしいだろ


首相 反原発グループと会談 NHK 8月22日
 野田総理大臣は、原発に反対する抗議活動を続けている市民グループのメンバーらと総理大臣官邸で会談し、原発の運転再開について、来月、発足させたいとしている原子力規制委員会が厳格に安全性を確認して判断していくとして理解を求めましたが、市民グループ側は、承服できないとして、会談は平行線で終わりました。



菅前総理・市民団体ほかとの面会-平成24年8月22日(動画へのリンク)

首都圏反原発連合ホームページ

 会談は予想通り、野田首相「将来ゼロにするつもりだから、これからの再稼働には目をつぶって許してね。てへぺろ」、反原発団体「何言ってるんだ。今すぐゼロだ。ぷんぷん」と平行線で終わったようだ。
 
 首相は将来脱原発をすると言っているが、「30年代前半、原発ゼロ」なんて計画はあってないようなものだ。社会情勢が変わったことを理由に計画を撤回することは目に見えている。単なる空約束に過ぎない。

 野田首相は単純に「国民生活への影響などを総合的に判断したら原発は再稼働するしかないっしょ」と考えているのだろうが、その程度の覚悟で中長期の脱原発を口にしてほしくない。

 脱原発派が主張する原発の問題点(絶対的な安全はない/原発災害の過酷さ/使用済み燃料問題)を問題点として認識して即時脱原発を真剣に検討すれば、エネルギー安全保障や電気料金の上昇、税金の投入、原発労働者の雇用への配慮など考えなければならないことは山ほどある。

 そりゃ今まで通り原発を動かした方が首相にとっては悩まなくてすむから楽だろう。だからといってフクシマの事故がまるでなかったかのように全ての原発の再稼働をしようとするのはあんまりだ。

 一方で首相は、自分に責任が及ばないことをいいことに無責任に将来の原発ゼロ方針だけは決定しようとしている。政府の原発ゼロ方針は自然エネルギー技術の飛躍的な発達を前提にした非現実的な方針である。エネルギー安全保障上、原発を完全になくしていいかどうかは本当に悩ましいところだが、そうしたことを真剣に考えた形跡はない。(私は極力原発をなくすべきだと思っているが、エネルギー安全保障上、最低限の原発は将来的にも必要だと考えている。自衛隊と同じで原発は必要悪である。)

 「30年代前半、原発ゼロ」を軽々しくにおわせながら、一方では再稼働やむなしとする判断はなんとも解せないものがある。
 
 結局、野田首相は事勿れ主義者なのだろう。

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首相 反原発グループと会談 NHK


首相 反原発グループと会談 NHK 8月22日

 野田総理大臣は、原発に反対する抗議活動を続けている市民グループのメンバーらと総理大臣官邸で会談し、原発の運転再開について、来月、発足させたいとしている原子力規制委員会が厳格に安全性を確認して判断していくとして理解を求めましたが、市民グループ側は、承服できないとして、会談は平行線で終わりました。

 野田総理大臣は、22日午後、毎週金曜日を中心に総理大臣官邸の前で原発に反対する抗議活動を続けている市民グループのメンバーらおよそ10人と総理大臣官邸で会談しました。
 この中で、市民グループ側は「原発事故の収束もままならないなか、何の教訓も得ず、運転再開ありきで物事を進めた野田政権に対する怒りが噴出する形で、抗議行動の規模は拡大を続けている。政府が、国民の声を無視して運転再開を目指すかぎり、揺るがぬ意思で抗議を続ける」などと述べました。
 そして、関西電力大飯原発の運転再開の中止や、現在、停止している原発を運転再開させないこと、それに、国のエネルギー政策を転換し、すべての原発を廃炉にすることや、原子力規制委員会の人事案を撤回することなどを求めました。
 これに対し、野田総理大臣は原発の運転再開について、「これまでの知見や対策を踏まえ安全性を確認し、国民生活への影響などを総合的に判断したもので、特定の経済団体などに影響された判断ではない」と述べました。
 そのうえで、野田総理大臣は「これからも安全性の向上に不断の努力をしていく。来月には発足させたいと思っている原子力規制委員会の下で、厳格な安全性の確認をしてもらいたい。原子力規制委員会の人事案は、最終的には国会に判断してもらうというプロセスになる」と述べました。
 そして、野田総理大臣は今後のエネルギー政策について、「政府の基本的な方針は『脱原発依存』で、中長期的に原子力に依存する態勢を変えていくことを目標にしている。丁寧に国民のさまざまな声をしっかり受け止めながら、政府として、最終的には責任を持って、方向性を定めていきたい」と述べ、理解を求めました。
 しかし、市民グループ側は「ほとんど承服できない」などとして、およそ30分間の会談は平行線で終わりました。

テーマ : 脱原発
ジャンル : 政治・経済

生煮えの国民的議論


討論型世調で原発ゼロが46.7% NHK 8月22日

 討論型世論調査は、専門家が作成したバランスのとれた討論資料の学習に続き、小グループに分かれての国民同士の討論や、全体会議における専門家への質問を繰り返すことにより、熟慮の結果として国民の意見がどう変化するかを把握する点に特徴があるらしい。

 調査の内容や報告書は政府のホームページ(以下参照)で公開されている。

エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査ホームページ
調査報告書(PDFへのリンク)

 討論後の結果は上記の通り、ゼロシナリオの支持者が46.7%と最も多くなった。ただ、注意しなければならないのは、参加者に与えれた情報が不十分なうえに、討論時間も短かかった(3時間)ということだ。

 信じられないことだが、討論後でも参加者の8割は京都議定書のCO2等の削減義務の比率(90年比で2008~2012年の間6%)すら知らないのだ(調査報告書69P参照)。削減義務の比率が26%もあると考えている参加者がなんと5割以上もいる。

 3つのシナリオはどれも2030年のCO2削減率が25%程度と大きく、そのため特にゼロシナリオはCO2削減のための負担が大きくなっている。ゼロシナリオを選択すると生活が苦しくなるということがこれでもかと書かれている。

 それでもゼロシナリオの支持者が46.7%と最も多かったのだが、参加者がそもそも事実として2030年のCO2削減義務など一切ないということを知っていれば、ゼロシナリオの支持率はもっと増えていたことだろう。ゼロシナリオで示された負担は2030年のCO2削減率25%という前提を外せばかなり軽減するからだ。

 参加者の知識が不十分なことにつけ込んで、シナリオ作成者である政府は選択を誘導しているのだ。そうした誘導がありながらも原発ゼロが46.7%となったことを重く受け止めてもらいたい。

テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済

討論型世調で原発ゼロが46.7% NHK


討論型世調で原発ゼロが46.7% NHK 8月22日

 エネルギー政策の見直しに向けて、政府が今月行った「討論型世論調査」の結果がまとまり、2030年時点で原子力発電をゼロにする政策を最終的に支持した調査の参加者は46.7%と、全体の半数近くに上ったことが明らかになりました。

 「討論型世論調査」は、2030年時点の発電量に占める原発の比率を「ゼロ」、「15%程度」、「20%から25%程度」とする3つの選択肢について、無作為に選ばれた280人余りが、複数回討論し、選択肢の中からどれがふさわしいかを、討論の前と後に参加者に選んでもらったものです。
 その結果、▽討論を終えたあとに原発「ゼロ」を支持した人は、討論の前に比べておよそ14ポイント増加して46.7%と全体の半数近くに上った一方、▽「15%程度」を支持した人は、討論前より1ポイント余り少ない15.4%、▽「20%から25%程度」を支持した人は、討論前と同じ13%となりました。
 一方、複数の選択肢を支持した人や積極的な支持がないとした人は、合わせて24.9%でした。
 また、エネルギー政策で最も重視することを複数回答で聞いたところ、「安全性の確保」を選んだ人が76.5%となり、「エネルギーの安定供給」の40.4%や「コスト」の16.1%を上回りました。
 政府は、こうした結果を、世論調査の専門家で作る有識者委員会で詳しく分析してもらったうえで、新たなエネルギー政策にどう反映させるか検討することにしています。

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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悟空

Author:悟空
原発の闇を訴えるブログ。未来の子供に核のゴミのないきれいな日本を残したい。コメント等ご指摘大歓迎です。
私が即時原発ゼロを主張する理由はコチラをご覧下さい。

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