「2030年原発ゼロ」という茶番劇
茶番劇(ちゃばんげき)
オチが読めるくだらない芝居。転じて結論の見えた争いや議論。
「30年代前半、原発ゼロ」 政府検討
政府の「エネルギー・環境会議」が、総発電量に占める原子力発電の割合について「2030年代前半の原発ゼロ」を目標とする方向で検討に入ったいう記事。
政府が原発の廃止に向けて大きく舵を切ったという印象を受ける方も多いだろうが、実際のところは原発と真正面から向き合うことを避け、原発維持の方針をなしくずし的に決定した茶番劇である。(「30年代前半、原発ゼロ」というのは30年代前半まで原発を維持するということ。)
政府は国民の声を聞くとして、30年時点の原発の割合を0%、15%、20~25%とする三つのシナリオ(下記リンク参照)を示しつつ討論型世論調査やパブコメを行ってきた。
エネルギー・環境会議 / 3つのシナリオ
「30年代前半、原発ゼロ」というのは、一見3つのシナリオのうちの国民の多くが支持しているゼロシナリオと同じようにみえるが似て非なる代物である。ゼロシナリオは「2030年までのなるべく早期に原発比率ゼロにする」というものである。「なるべく早期に」という表現は曖昧であるが、理論上は来年(2013年)からゼロにするという可能性も含んでいる。「2013年からゼロ」と「2030年代前半にゼロ」は全く意味が異なる。
多くの国民が関心があるのは、止まっている原発を今後稼働させるべきかどうかという今現在の問題である。フクシマの事故を契機にして多くの国民は、エネルギーのコストや安定供給をある程度犠牲にしてでも原発とはおさらばすべきではないかと考えている。原発事故の過酷さと絶対的な安全というものは存在しないこと、さらには原発がトイレのないマンション(使用済み燃料の処理技術もなければ処分場所も決まっていない)であり将来世代に対して無責任な電源であることが明らかになったからだ。
国民的な議論をすべきは遠い将来のことではなく、今現在の原発利用のあり方だったはずだ。しかし、政府はたくみに焦点をずらし、2030年の電源構成を議論の対象とした。将来世代に対して無責任な電源である原発を利用していくのかどうかという根本的かつ倫理的な問題に真正面から向き合うことを放棄したのである。
まだ正式な決定ではないがおそらく「30年代前半、原発ゼロ」が落としどころとして選ばれるだろう。「30年代前半、原発ゼロ」というのは、今現在の原発利用を認める方向性である。「30年代前半、原発ゼロ」を目指しているというふりをしさえすれば(おそらく将来的には原発ゼロ方針も変更されるだろう)、今現在の原発利用になんら制約はない。つまるところ、政官財のトライアングルが「30年代前半、原発ゼロ」を隠れ蓑にして、今後の原発再稼働、原発維持という実(じつ)をちゃっかりとったということである。
願わくは、原発に関心のある多くの皆さんに、形ばかりの「国民的な議論」の裏にある政府の思惑を感じ取ってほしいものである。
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テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済